星の降る丘で
先月。毎日猛暑。雨は降らず。
今月。以下同文。 そんな状態が続き、各地で水不足、食料不足が続く。 聞えてくるニュースもその事ばかりで、他に何も、犯罪の報じられる事も無い。 犯罪を起こす気力すらも誰にも無いのだろう。 あちこちで特別対策会議だとか、そんな毎日。 誰しもがそんなもの無駄だと思っているはずだ。 雨が降り、あの太陽の猛威が終わらなければ何も解決にならないのだから。 だが、そんな事は悲劇の序章でしかなかった。 とうとう、死者が出てしまったのだ。 それも、続々と。 パニックになる者、無気力で何かを待つ者。 そして、消えていた犯罪という悪雲が立ち込める。 暴動、略奪。すごい勢いで各地で広がった。 そして、その行為が完全にこの国を壊した。 私は、というと、何をしてもいいか分からず、ただただ毎日を繰り返していた。 なるべくエネルギーを抑えて、少しでも生き長らえる為に。 少しでも。生き長らえる為…? そう、すでに本能で気付いていたのだ。 いつか死ぬ事を。恐らく、皆助かる見込みはないだろうと。 それでも、希望を無理やりもたせ、生きようと頑張ってみる。 でも、それも長くは続かなかった。 とうとうその時はやってきた。 限りあった食料が尽きた。そう、わかっていた。 続かない事を。どこを見ても食料も水も無い。 高温のせいで次々と腐り、枯れていく死体と大地。 すぐ先の自分の未来をリアルに見ている。 まわりに何もいない。 とうとうこの地域では私が最後の生存者になった。 そして最後の死者になる。もう先は長くない。 そしてその日の夜。 私の最期がやってきたのである。 不思議なもので、終わりを感じた時、何故か一生を振り返った。 私は、気付いた時にはこの地に生まれていた。親の事も知らない。 生まれた時、私は独りぼっちだった。 でも、そんな私にも友や仲間が出来、それなりに幸せに生きてきた。 私の肩に止まる鳥のさえずりを聞くのが、何よりの楽しみでもあった。 もう少し、そんな幸せに浸っていたかった。もう少し…。 ふと気付くと、涙が溢れていた。 長い間、水分を摂っていないのにも関わらず、どこからともなく、止め処なく溢れてくる。 最期を迎え、初めて悲しみと怒り、後悔、絶望に襲われた。 嫌だ。私が、私達が何をしたというのだ。 戦争や殺戮を繰り返している種族は生き長らえ、平和を望み生きてきた私達をどうして滅ぼそうとするのか。 次から次へと怒りと悲しみが湧いてくる。 そして、力ない笑みが… なぜ笑みがこぼれたのか。 今まで、ぎりぎりまで無気力に生き長らえようしていたのに、死を間近にして急に色々と後悔をしている自分におかしく思えたのか、諦めがついたのか私自身さえも分からなかった。 そして、とうとう意識が薄れてきた。 あぁ、終わるんだ。最期にもう一度、あの鳥たちのさえずりを聞きたかった。 そして、仲間達と… そんな事を思いながら朦朧とする意識の中、ふと誰かに呼ばれた気がして、何故か空を見上げた。 今まで生きてきて初めて見上げた夜空。 雲ひとつなく、澄んだ夜空に降る星たち。 また涙が溢れた。 何で今まで気付かなかったのだろう。 最期の最期で気付いた、美しく壮大な光景。 いつもこの丘の上に立っていたのにどうして… 突然、涙でぼやけていた視界がさらに真っ白にぼやけていく。 私は時間がないと悟り、ゆっくりと目を閉じた。星たちを目に焼き付けて。 間もなく、私の命は終幕を迎えた。 星たちと一緒に旅立つように。 ひっそりと、誰にも気付かれずに、そっと。 数日後、私の体は根から倒れこんだ。 この枯れた砂の大地に。 今もなお、数多の種族を巻き込み、砂の大地は、広がり続ける。 全てを、飲み込むように。 ページ内の文章及び画像の無断転載・引用・改ざんを禁止します。 Copyright (C) 2004 All Rights Reserved By WebMaster kou. ダンディライオン since 2004.05.24 |