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復帰

              「取り戻した心、新たなる幕開け」



 ママの石を後にした僕はミチシタさんを探した。すぐにハシグチさんと話をしているミチシタさんを見つけ、側に駆け寄った。
「コスモス?今日は早いな。いつも日が暮れるまで帰ってこないのに。どうした?うっ。」
 僕はごめんなさいの意味を込めていきなりミチシタさんの顔をペロっと舐めた。色んな意味でびっくりしたのかハシグチさんと顔を見合わせ目を丸くしてる。そんなミチシタさんを横目に、僕は周りをぐるっと1周走ってまた顔をペロってしてみた。
「コ、コスモス…?もしかして走ってくれるのか?そうゆう事なのか?」
 興奮気味にミチシタさんが聞いてくる。僕はうんっと一声、ブルッと鳴いてまた顔を舐めた。
「そうか、そうなのか…。よかった…何があって立ち直ってくれたかは分からないけど、ありがとうな。そしてゴメンな、コスモス。ありがとう…。」
 そう言いながら僕の首ををぎゅーってしてくれた。苦しいよぉとまた鳴くと、
「すまんすまん。苦しかったか。嬉しくてついな。来週、厩舎に戻すように手配するから。復帰したらまた忙しくなるしな、もう少しゆっくりしいていいよ。」
 そう言うとハシグチさんを引き連れて慌ててどこかに行ってしまった。これでよかったんだよね、ママ。これで。

 そして、1週間が過ぎた。朝からミチシタさんがやって来て声をかけてくれた。
「今日の午後に出発だからな。また忙しくなるぞ。コスモス、お前は強い仔だ。頑張ってな。」
 そう言って頭を撫でてくれた後、また慌ただしそうにどこかへ行っちゃった。僕もお兄ちゃん達に挨拶しておこう。そう思って出掛けた。

「お兄ちゃん。」
 風邪をひいたらしく、お兄ちゃんは馬房の中で眠っていた。どうしようかとも思ったけどまた暫く会えないし、黙って行ったら怒りそうだしね。仕方なく声をかけた。
「あぁ、コスモス。今日帰厩だったよな。風邪がひどいから見送りは行けないが…。」
「いいんだよ。だからこうやって来たんだ。お兄ちゃん、色々ごめんなさい。」
「気にするな。俺こそ謝らないといけないし。それに、オマエの気持ちは痛い程分かるから。立ち直れたんだ、俺の夢の続き、また追い掛けてくれよな。」
「うんっ!また頑張ってみるよ。お兄ちゃんはママが淋しがらないようについてあげてててね。」
「あぁ、わかったよ。」
「じゃあラベンダーおばさん…お母さんにも挨拶しに行くから。じゃあね。ゆっくり寝てて。」
「はは…元気で頑張るんだぞ。いってらっしゃい。」
しんどそうながらも笑顔で見送ってくれるお兄ちゃんの所を後にして、次の目的地に向かった。

「ラベンダーお…お母さん!」
 思い切ってそうよんでみた。
「コスモス…?はは…何か照れるね、いきなりお母さんって呼ばれるのも。」
「えへへ。今日、厩舎に帰るから挨拶にきたんだ。」
「そっか。うん、いい顔になったね。また頑張るんだよ。」
「うんっ!ありがとうね。ラベンダーお母さんがいてくれなかったら僕、あのままダメになってた。本当にありがとう。」
「いいんだよ。感謝の気持ちはその脚で返してくれたらいいよ。親友の子として、そして私の子としても応援してるからね。」
 そう言うとほお擦りをしてくれた。
「うんっ!じゃあそろそろ戻るね。いってきます。」
「いってらっしゃい。ヴェールにもよろしく言っといてね。」
 頷いて返事をした後、僕は自分の馬房に戻った。脚取りは軽く、また前だけを向いて走れる気でいっぱいだった。
 その時はまだ。

「コスモス、まさか…。」
 僕を見たラベンダーお母さんが一抹の不安を抱いていたなんて、その時は知るよしもなかった。

第十二話 「帰厩」に続く。

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